コードノート

コードノートはwebを中心にテクノロジー・クリエイティブを伝えるWebメディアです。コードリンク代表、片岡亮が執筆しています。

効率化とダークサイド

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ITといえばおおよそ効率化を追求するためのツールだ。そこで働く人達も効率的な考えるをする割合が、他の業界に比べてもおそらく多い。

効率化思考により、それまで人が手動でやってきたことを、機械で自動化するなどして利便性をあげることで人間がハッピーになれる。効率化により一世紀も前から見れば魔法のような世の中になったと言える。

一方でその効率化を大いに活用するweb業界は、その負の側面に落ちがちなことが多い。それは主に業界が不景気な時だ。

僕はweb業界に10年ほどいて、業界に入ったばかりの頃はガラケー全盛期でi-modeの恩恵を大いに得ていた。

そんな中、モバゲーのようなブームもひと段落しスマートフォンが登場し、ソーシャルゲームも登場しだした頃から効率化の負の側面が見え隠れしてきた。

効率化というのは、新しい道を開拓している時にはその開拓スピードをあげることに非常に貢献するが、その業界が下降路線に入ってくると変なところに力を入れ始めることが多々ある。

例えばガラケーの公式サイトでは、落ち目になってきた時、ユーザーの退会率を下げることに効率的な思考を使い出すことになった。ユーザーの絶対数が頭打ちになり、スマートフォンも見え隠れしてくるとなると、新しいユーザーを獲得することにコストをかけるより、今いる会員にそのままいてもらうことを考えることの方が効率的だからだ。

ただそのための手法に割とダークサイド的な考えが多く、さらにユーザー満足度を提供することを考えるより(それをもうある程度やり尽くしているというのもあると思うけど)、とにかく退会しづらくするということを追求しだした。

当時のことを覚えている人であれば、公式サイトの解約が面倒だったことを覚えているかもしれない。とにかく退会ボタンをわかりにくいところに設置することはもちろん、ひどいところだと深夜帯は退会ボタンを隠すなんてこともあった。キャリア側からチェックがあるとすれば営業時間内の時だけだからだ。

しかもそんな内容を堂々と勉強会みたいな形で共有していることもあったと思う。さすがにオープンな場でそんなことを言わないとしても、公然の対策としてその情報が交換されていた。ここまで退会をしづらくするマズいけどここまではセーフ、みたいな。

キャリアの公式サイトでこんなレベルなので、勝手サイトなんていま考えると本当に酷かったなというかんじだ。

昨今のキュレーションメディアの問題もだいたいはこれと似たような思考からきている。コストを下げるため安くライターを起用しコンテンツを作り、掲載する広告の単価が高い医療系のジャンルを狙う。実に効率的だ。

これは基本的に広告モデルが成り立っていないところから来ている。Twitterが赤字なのも、ユーザーは抱えていてもそこで払うコストに対して入ってくる広告費が足らないからだ。元TwitterCEOのウィリアムズ氏も「オンライン広告モデルは壊れている」という表現をしている。

digiday.jp

僕自身もここ数年webメディアの運営に携わっている手前、広告収入を最大化するためにDSP/SSPといったいわゆるアドテクの学習はそこそこやってきたけれど、結局頑張ってここが頭打ちか、という感触を最近持っている。

頑張って広告収益を最大化してこれが限界なら、キュレーションメディア的に仕入れの金額を減らすしかないよね実際、というかんじだ。

そうやって消去法的・効率的に選択していくと自然にダークサイド的になるのがこの業界の怖いところだと思う。

だからといってwebメディアの終焉だ!なんて言うつもりもない。ただ単にうまく行かすための公式が単純で無くなり、みんなこうすればokなんて一本道じゃ無くなってしまっただけだ。

効率化というのは消去法で道を探すのは得意なのだけど、簡単に選べる道にダークサイドしか見えなくなった時とても弱い。しかもやっかいなのが一気に真っ黒になるのでなく、ジワジワ黒くなっていくことだ。

これだと広告枠を増やすしかない、これだと制作費を減らすしかない、そうやってジワジワ締められていく。ただ効率化を考えているだけだったのに。おそらく今後しばらく主にweb業界に関してはこのジワジワ感は続いていくと思う。結局多くのメディアは広告収益しかないからだ。

ガラケーからスマートフォンに移行していた時はまだスマホシフトだ!とかソシャゲ事業を始める!なんてわかりやすい道がまだあったけれど、今回はそんな分かりやすいルートもない。

そんな中先ほどいったキュレーションメディアみたいな問題が叩かれすぎだったのはある意味今の時代の良い点かもしれない。昔だったらこっそりダークなことをしていたのが、今はすぐバレて叩かれる。ちょっと叩きすぎだとは思うけれど、悪いことは叩かれないよりは叩かれた方が良い。

こんな話をしているとweb業界に自浄作用が無いようにも感じられるけど、実際それがないわけじゃない。ただ船に開いた穴のように浸水の方がどうしたって早いだけだ。Googleの低品質なキュレーションメディアへの対策は遅かったとは思うがされているわけだし、Adwordsだって一時に比べればかなり審査が厳しくなった。

でも最近はその塞がった穴とは別に新たに出てきたFacebook広告だったりに際どい広告の予算は流れている。Facebook広告自体が良いものでも、ああいった出始めの広告媒体はだいたい出稿費が安くて審査がヌルい。その辺が塞がるまではまたもう少し時間がかかるだろう。

そのループを繰り返す中で、もっと高度な思考が要求される良いことしループから抜けるか、ループの中で空いた穴を見つけ安易に悪いことを続けていくかのどちらかだ。

今またそのループの変わり目を迎えているけれど、以前に比べその選んだ先の光と闇がくっきりと分かれる変わり目だと思う。

ダークサイドの誘惑はこれからより強くなっていくだろう。だからまずはダークサイドを選ばないという心の自立をしていくところからすべては始まっていくことになる。